アウトドア経験も活かした「一日一組限定の民泊宿」を中心に、多業へ発展
西 絵満(えみ)さん・雄司(ゆうじ)さん
Iターン(岡山出身) 、Jターン(石川出身)
◎アウトドアスキルの高いご夫妻が、猫たちと住まう。
◎多業種を展開。 ・「猫がいる民泊宿(一日一組限定)」
・「ゲストハウス兼レンタルスペース」の各運営、
・「日替わりマスターのカフェ」プロデュースと運営、
ほかデザイン業務など。
◎地域で繋がった様々な縁をもとに、新たな展開にも着手。
【きっかけ】レジャー訪問先だった能登を、移住先に
西さん夫妻は、ともにアウトドア用品メーカーのモンベル(本社/大阪)に勤務していた頃に知り合いました。当時から各種のアウトドアレジャーを自身でも楽しみ、能登にはカヤックやサイクルツーリングに訪れることも多かったそうです。
状況が変わったのはコロナ禍。自宅でのリモート勤務を経験し、大阪のぎゅうぎゅう満員電車で通勤する毎日に疑問が湧いたのです。雄司さんのご両親が石川県内に住んでいたという背景もあり、北陸への異動を希望するとそれぞれ北陸の店舗への勤務が叶いました。2人の通勤の中間地、石川県津幡町(金沢市の北隣)に住んだこともありましたが、賃貸物件だったため、より快適に過ごせるよう工夫したいと感じても改装は不可。
そこで、宝達志水町で見つけた戸建ての家を2023年1月に購入、2~3月にかけてDIYで床のフローリング張りや壁の漆喰塗りなどの改装を自らで施し、春を迎えて4月に住み始めました。



【転機】能登半島地震の支援活動を端緒に、宿泊開業へ舵を切る
宝達志水町に住み始めて以降、二人は能美市(石川県の南エリア)で相続した実家の建物を活用したいと計画を立てていました。そんな矢先、R6能登半島地震(2024年1月)が起きたのです。
モンベルには、各種のアウトドア用品やノウハウを被災者の救援に役立てようと組織された「アウトドア義援隊」があります。災害時に寝袋やテントなどを被災地に提供してきました。しかも、口能登エリアの羽咋市(宝達志水町と隣接)に倉庫拠点を持っており、義援隊は被害の大きかった奥能登へ物資を届けに向かいました。
西さん夫妻もそこに加わる中で、奥能登では被害の甚大さゆえ復旧作業員や災害ボランティアさんが寝泊りする場所すら確保できない状況を目の当たりにします。当時地元ニュースでも、復旧作業員の実働時間が、ホテル数の多い金沢まで往復する移動時間で大きく削られざるを得ない状況が悲痛に報じられていました。すでに自宅はモンベルの義援隊メンバーの宿泊に使ってもらっていました。
そこで夫妻は、開業ハードルが通常の宿泊業より低い民泊での宿泊受け入れを決意し、ボランティアさんの利用を想定して動き出しました。「chirin(ちりん)」は、こうして誕生に至ったのでした。



【開業】「猫と暮らす田舎の一軒家」という宿スタイル
結果的には、宿泊業許可が取れた頃には被災地でのボランティア宿泊受け入れ状況が当初より改善されてきていました。しかし、能登観光の落ち込みは凄まじく、復興の早かった口能登エリアでも観光客は激減。遠慮せず能登に観光に来てほしい、その一助にと、観光にシフトチェンジしました。



夫妻のご自宅の一角を開放した「猫と暮らす田舎の一軒家 Chirin(ちりん)」は、自炊可、猫ちゃんワンちゃん可、一日一組限定の宿となりました。徒歩圏内には、波打ち際を車で走れることで全国的にも有名な「千里浜なぎさドライブウェイ」があり、自慢の日本海の夕景を楽しんでもらうにも好立地です。
宿の利用者さんの中には、猫ちゃんワンちゃんを連れて一緒に泊まりに来てくださる方もあれば、今は飼えないからと、夫妻の猫ちゃんと過ごす時間を求めてやってくる方もおられます。ちなみに、白毛ベースにサバトラ柄のISSAくんと、元保護猫で茶トラの慎重派MOMOちゃんの2匹の猫ちゃんが、西さん夫妻の家族です。
宿泊客さんにはご希望の過ごし方を伺いながら、夜にはともに日本酒を囲んだり、昼間は能登半島でいちばん高い山・宝達山(ほうだつさん)へご案内したりと、触れ合いも楽しんでいただいています。
おすすめの「朝食体験」のメイン食材は、能登のふっくらフグ一夜干し。これも能登半島地震と輪島朝市の大規模火災によるダブルパンチの影響で、それまでの行商の販路を失った方がいると聞きつけ、宿での取り扱いを始めたものでした。冷凍での販売も可能。一夜干し干物セットの販売告知チラシもデザインしてあげました。そうそう、絵満さんはデザイン業務も受け付けているのです。



【応援】ご高齢80代スナックママの宝物を受け継げる方法を模索
能登半島地震による地域落ち込みの余波はまだありました。地元で長く愛されてきたスナックの閉店です。それが西さん夫妻の生活をもう一つ思わぬかたちへと変化させることとなりました。
コロナ禍も乗り越えたスナックは、地震以降、極端にお客さんが来なくなりました。能登半島地震から1年半、80代のママはとうとう閉店を決意。「店舗を活用したいという人がいないようなら、店の建物も取り壊す」と決心しました。その話が西さん夫妻の耳に届いたのが、閉店予定まで残りわずか1か月という2025年7月。
とはいえ、すでに能美市の里山地域でゲストハウス開業も済ませており、西さん夫妻はもう手いっぱい。週末は特に忙しい。もし何かやるとしても、平日のうち3日ぐらいが限界か。
思いを巡らせ、「日替わりマスター」を迎えるスタイルならば実現できるだろうか、というアイデアに辿り着きました。そのタイミングが折しも、翌日に町の創業塾が開催されるという前日。受講者は町の創業補助金の対象となります。過去に飲食業の経験のあった雄司さんが代表となって、開業費用の2分の1の助成金が受けられる創業塾に、滑り込みセーフで申し込むことができました。



【協力体制】みんなで営業を分担するコミュニティカフェへ
2026年が明けた現在、COMMUNITY CAFE(コミュニティカフェ)「WA(わ)」では、宝達志水町に移住してきた皆さんのネットワークを中心に協力者が集まり、すでに7つの屋号のお店が誕生、店内で日替わり開店するスタイルになっています。
雄司さんのスパイスカレーがランチで食べられる曜日、夕方から「せんべろ」呑みやデザートが楽しめる曜日、おばんざい食堂スタイルの曜日、ふわふわタコ焼とたこせんが味わえる曜日、音楽家による酒場となる曜日、無農薬・有機栽培の地産地消カフェとなる曜日などなど。日替わりの詳しいスケジュールはカレンダー形式で告知しています。地域の方から熱い要望があり、引き続きカラオケも続けることにしました。
「日替わりマスター」になってくれる人は、不定期でもOK。現在は全員が他にメイン業務を抱えた兼業のため、まだまだ協力メンバー募集中です。
将来的な新規開業を考えている人が、試しに「1日店長」的に自分のアイデアやメニューを試すテストマーケティングの場としても活用可能。移住先での開業希望者は、「ぜひ我こそは」と相談してみてください。



【開拓精神】多業種展開で地方での暮らしを豊かに楽しむ
西さん夫妻の暮らしは、当初に思い描いていたよりずいぶん忙しくなってしまいましたが、大忙しの中にもほっと一息つける現在の暮らしを満喫しています。
「二足の草鞋(わらじ)」という言葉で兼業を表すことがありますが、西さん夫妻の「わらじ」の数は結構多くなりました。
「わらじ」のパスが自分に回ってきそうだったら、まずはそのパスを一回受け取ってみる、あるいは「わらじ」を自分から拾いに行ってみるのも、地方での生き方の可能性を広げ、暮らしを充実感のある楽しいものに変えていくチャンスになるようです。■
猫と暮らす田舎の一軒家 Chirin(ちりん)
石川県羽咋郡宝達志水町敷浪ハ120-20
公式サイト: https://chirin-noto.jp/
Instagram:@chirin_noto
Chirin ちりん ゲストハウス | 猫と暮らす | 能登
https://www.instagram.com/chirin_noto/
ひぐらし山荘
石川県能美市舘町戊100-1
公式サイト: https://higurashi-sansou.jp/
Instagram:@higurashisansou_kaga
ひぐらし山荘 〚ゲストハウス〛能美市
https://www.instagram.com/higurashisansou_kaga/
COMMUNITY CAFE(コミュニティカフェ)「WA(わ)」
石川県羽咋郡宝達志水町今浜203-3
Instagram:@wa_cafe_noto
CommunityCafeWA | コミュニティカフェわ
https://www.instagram.com/wa_cafe_noto/
宝達志水町は小さな町だけれど、そんな中でも新しい展開が色々生まれています。
可能性はまだまだあるので、移住を考えている人は
ぜひ一度、宝達志水町の様子を直に見に、訪ねてみては?
移住者さんのお話を直接聞いてみたい、という方も、お待ちしています。
